中学生の頃、歩いて20分くらいの処に映画館があった。普通の映画と成人向映画を三本立で上映していた。
どう云う訳か、18歳未満の僕を何度か入れてくれた。もしかしたら本格的なポルノじゃなくて、ヌードがあっても性描写の軽い映画だったからか。
とにかく、僕でも入れてもらえたことが大切なことだ。
恐る恐るチケットを買って(無理かなと怯えながら) 「どうぞ」と言われた時は泣きそうに嬉しかった。 年齢だけのことなのに、まるで罪人が許されたように 感謝の気持ちを持ち続けたものだった。 その映画館の近くを通るだけで胸が熱くなった。
入館するには御金がかかるのは当たり前のこと。 看板はタダで見れるから、見せてもらっていた。 ある時、ウキウキして行った。御金があったからだ。 ところが閉館していた。一瞬、生唾を飲んだ。
閉館してからは、そこへ通うことが増えた。 徒歩が原則だが、自転車でも行った。 その行動に「訓弘!しょっちゅう何処行ってんのん」 おばあちゃんが僕の異変に気付いてしまった。 映画館のことは言えなかった。 「運動してんねん!鍛えないと・・・」 それが嘘であることを祖母は知っていたはずだ。
閉館して、どれほど経ったか。時間感覚は無い。 ある日、工事のような景色になった。 その景色はやがて「更地」を顕した。 僕は更地を何度か見に行った。やはり楽しい。 そして新しい建物が顕れてきた。 それから数ヶ月・・・ 僕は何でも無い日常に帰った。
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